基礎デザイン学科

science of design

As the world happens
加賀谷七海

フラペチーノを手にして、時々それを飲みながら闊歩するゴスロリ風の少女を主人公として設定し、多様な文化圏における特徴的な情景を背景を歩き過ぎていく動画を制作した。表情ひとつ変えず、飄々と歩く少女の背景は、原宿からジャングルへ、ヒグマの出現する森から深海へ、あるいは切腹をしている侍や、司教に抱かれて洗礼を受けている赤ん坊の情景へと移り変わっていく。淡々と異世界を横断していく少女の闊歩を演出する音楽リズムも秀逸でいつしか異世界の連続の中に引き込まれていく。
巻物も制作しているが、クラシカルな巻物と化した少女の横断世界もまた十分に見応えのある完成度となっている。

photo by Kita Otsuka

ひのきの木目の再構築 
酒井麻衣

「木目」に注視し、木目を異化していく手法を見出した。具体的には鉋で削り取られた「鉋屑」にアイロンをかけ、面精度の高いパネルの上に、緻密に貼り込んでいったのである。柾目や板目の差異は当然であるが、木目の向き・方向もまちまちである平面オブジェクトがまず完成した。その後に、やはり木目の持った特殊な立体物を制作した。多様な向きの鉋屑が、全ての面に精密に貼り込まれた小さなオブジェクトを、平面木目オブジェクトの上に展開・配置していったのである。めくるめく木目の世界は、静かに既知の素材感を逸脱し、その魅力を新しいリアリティとともに発している。

photo by Kita Otsuka

オストラネーニエ
内野紗葉

原稿用紙や帳票を罫線に沿って裁断し、升目に従って折り畳み、あるいは短冊状にして輪っかにする。軍手の黄色いゴムの滑り止めを切り抜く。新聞やレシートの全面を鉛筆で鈍く光るまで黒く塗りつぶす。こうした造形行為が構築ではなく解体へ、秩序ではなく逸脱へ、すなわち造形と真逆の方向へとむかう時、何が顕在化するのか。これらの実験作品においては目的や意図はなく、「してみたい」という衝動が作業を突き動かし、その結果、日常品は機能を剥奪され、退行の果てにケイオティックな「負の造形」として立ち現れる。

photo by Kita Otsuka

風景の中のわたしたち
洞澤侑奈

通学路に弾む小学生たちの声、八百屋の呼び込み、工事現場に漂うひとときの静けさ、団地の窓からこぼれるゲーム音、キャンパスの講義室で、教授の低い声にまどろむ学生―平凡な日常の気配をすくい集めた絵本3部作。風景写真に挿入された人物のイラストレーションは簡潔である。ストーリーがあるわけでもなく、表現に新しい試みがあるわけでもない。しかしながら、そこに流れる時間は、なんと豊かな「ささやかさ」に満ちていることか。美大生の画力が余すところなく息づき、絵本を閉じたとき、微笑む自分が静かにそこに佇んでいる。

photo by Yuki Akaba

Laundry Piles
塚本このみ

洗濯物の山をモチーフとした彫刻作品である。形は布の集積として認識できるが、近づいて見ると皺は取り除かれ、ふくよかな量感のみが前景化することで、鑑賞者の意識は次第に形そのものへと向かう。その造形は、あらかじめ計画された形を実行した結果というよりも、制作の過程で形と向き合い、応答を重ねるなかで立ち現れたものである。このプロセスが、具象と抽象のあいだに位置する独特な形態を生み出している。

photo by Yuki Akaba