基礎デザイン学科

science of design

粒子の世界
大本友里加

分子の世界を体験したい。電子顕微鏡やCGを通してではなく、身体を分子くらい小さくして、結晶構造の中にひたってみたい。身の丈をこえる空間づくりは微細な表現と大がかりな装置ゆえ、決して楽ではなかったはずだ。分子を一粒の水滴に見立て、その粒子をアクリル板に配し、板を幾層も重ねた。近づいて目を移動させると、遠近感をともなって空間に浮かぶ格子状の透明な粒子が視野一杯に広がる。まさにみずみずしい身体体験。(板東孝明)

Lines-多次元に存在する線
髙橋 真穂

黒く細い線で立体的に描かれた幾何学図形やミルクパック、折り紙。一見、ピアノ線のような細い鋼線でつくられていると見まごう。実はシャープペンシルの芯なのだと気づき、はっとする。なんという繊細さ。長い線は芯同士を直線につなぎ、接合部は小口を微細に削ってシルエットをすっきりと。作品が置かれた白い平面には描かれた線もあり、どれが芯なのか判別し難い。触れただけで壊れてしまいそうなあえかな「かたち」が出現した。(板東孝明)

線を描く
吉原佑実

この制作のタイトルは「線を描く」であるが、これは制作の一面に過ぎないだろう。提出した作品以外の多くの制作に長い時間かけて描くことで、見る者に、意識性と無意識性、全体形状を構想する計画性とデティルの関係性による自己組織的、無計画性、心で描くことと手の動きによる即興性との連動、などなど制作をめぐる問題を考えさせる。線の造形以上に、制作のプロセスとその問題を感じさせる作品である。(小林昭世)

Cm-VEGE
鎌田 拓磨

野菜が全て円筒形だっからどうだろうか。食用なら、食べやすく調理しやすい形にあらかじめなっていたら、という、とてもユニークな発想である。タイトルの「Cm VEGE」には微妙なアイロニーが含まれている。なんでも合理性を優先させて進化させてきた人類であり、またハイテクノロジーと、緻密な管理がお家芸である日本であるなら、本当にこういう野菜やくだものが登場することになるのかもしれない。パイナップルなど、細部の立体までしっかり見ていただきたい。(原研哉)