circulative wear ー循環する衣服ー

蔵城百香

工業製品の多くは、主に一定の大量生産手法が確立されている。特に「使い捨て」を前提とした製品は、その用途に向くように設計段階から構造が簡略化されており、製品の役割を果たす最低限のシンプルな要素で成り立っている。また、コスト面から全てが同じ形状であり、運搬や収納に便利といった点から、大量生産品の多くはスタッキング(積み重ねる事)が可能である。
今回、工業製品のような無機質さを持ったペーパーモールドのスタッキングウェアを製作した。モールドとは、古紙などから採取した繊維を水中に分散させた紙料液のタンクに型を沈め、それらを吸引成型する加工の名称である。ボタン、ポケット、チャックなど最低限の衣服の要素を紙の凹凸で表現し、スタッキング構造が成り立つような形状にも重視した。
耐水性はない。雨が降れば濡れ、繊維の状態へと戻っていく。衣服とは本来、愛用する中で時間と共に愛着が湧いていく物だ。例として、ダメージジーンズや作業着などが挙げられる。それに対しこの衣服は、愛用はするが愛着が続く事は決してない。様々な坩堝を潜り抜け、役割を終え古紙となった衣服の繊維たちは、水に溶け攪拌され、次の新たな「circulative wear」として、生まれ変わっていく。地球を永遠に循環していくのだ。
この衣服は、今は着られなくてもいい。二十二世紀よりも遠い未来、テクノロジーが発達して便利さに依存した人間が、衣服を洗う事すら面倒、何度も同じ衣服を着続けることは不衛生だという思考になったその先には、「着る」ことの限界に在る衣服が生まれてくる。それは衣服としての「最期」であり、また「スレスレ」である。

10号館403