明朝体「はくれい」の制作

吉田大成

フォントは現在の紙媒体やメディア、視覚情報伝達の手段としてなくてはならない、人の「声」を伝える大切な存在である。どんな文章であろうと書き手の意思が形となって見えるのは、その書き手が自らの手で書いた文字や、フォントを使って出力された文字に委ねられる。例えば本を朗読する時どんなトーンで読むかによって物語の印象が変わるのと同じように、入力された文字がどんなフォントで表現されているかによって、その文章の印象は大きく異なる。
「はくれい」は情緒的な言葉や文章を組むことを想定した明朝体である。岡倉天心『茶の本』(訳: 村岡博)第六章「花」の文中の「日本の花は散る時さえも誇らしく、はかなく美しい」という表現から着想を得た。日本の文字が持つ筆の質感や、しなやかな曲線を生かしたエレメントで制作した。伝統的な手書きの手法とシステマチックな構造を作ることがこの作品のサブテーマであり、そうすることで太いものから細いものまで、仮名と漢字を5つのウエイトを持つ書体となった。
文章の中には様々な書き手の思いが介在し、その言葉を伝えたいイメージに近い形で読み手に伝えるのがフォントの役目の一つである。言葉に添えられた「はくれい」とともに物語に没頭してもらえたら嬉しい。

10号館413