基礎デザイン学科

science of design

Q. 基礎デザイン学科とは、デザインの基礎を学ぶ学科なのですか?

階段の第1段目というような意味での「基礎」ではなく、あらゆるデザインを同じひとつの視点からとらえていく大きなデザインのプラットフォームを意味する「基礎」です。デザインという概念は、人が生きて環境をなす、総合的な環境形式全体を包含するものです。それぞれの学生や卒業生はやがては社会に出て、個々の専門性を持つことになるのでしょうが、大学ではそれを分けないで学んでいくわけです。
(原研哉先生)

以前は「デザインの基礎」じゃないと説明していました。でも今は「デザインの基礎」でいいのだ、と思っています。ただし「未来の」という言葉が入ります。「未来のデザインの基礎」つまり、明日の生活にとって必要とされるデザインの基盤をつくるのです。アプリケーションではなく、OS(オペレーション・システム)をつくり出す。「デザインの基礎」はまた日本、アジアの文化の基層を学び、次世代に伝えることも大きな役割なのです。
(板東孝明先生)

60年以上も前、分業化し専門化しすぎた工学の研究と教育を科学の基盤の上で再編成する動きが「基礎工学」の名のもとにアメリカで展開されました。 基礎デザインもまた、同時期に、専門化しすぎたデザインを自然科学と人文社会科学の基盤の上で再編成しようとする運動です。 デザインの「基礎」とは、「これくらいのことを知っていればデザインができるという内容」ばかりでなく、「社会が新しい問題に取り組む時、デザインの知を編成し直すこと」や「これまでやってきたデザインに疑問が生じて、既存のデザインの前提を疑って、デザインを問い直すこと」などが含まれます。
(小林昭世先生)
Q. 他のデザイン学科とは何が違うのですか?

専門分野の名前を冠していない点が違います。皆さんはどんな組織にもなり得る万能細胞のようなものです。デザインを広くやわらかく学んで、自分の専門領域を自分自身の力で拓いていけるように育ってほしいと基礎デザイン学科は考えているのです。
(原研哉先生)

たて割りのデザイン領域では捉えきれないのがいまの社会です。また学際的な世界でも様々なジャンルの学問が協同して社会の諸問題を解決するために新たなそして横断的な研究をしています。基礎デザイン学科はそういった領域を脱し、かつ他の学問と連携して自由に思考や行動をおこなえるように、しなやかですみきった眼差しを持つ(デザインを学ぶより前に)人を育てたい。他学科とのちがいは、まさに本学科がオンリーワンであることです。
(板東孝明先生)

基本スタンス(立地点)が違い、デザインフィールドの視界を得られる軸足を確保することを学び、さらにその視野の広がりから自身の向かう方向を見つけることができます。
(宮島慎吾先生)
Q. 平面も立体も両方興味があります。基礎デではどんな分野を学ぶことができますか?

基礎デではプロダクトデザインを「人に関わるデザイン」と捉えていますので、カリキュラムの中でも立体に限定することなく指導をしてゆきます。人と人を取り巻く環境にデザインがどのように機能できるかを考えると、ジャンルという壁は意味をなしません。いつかデザインを深く理解した時、平面と立体の区別などなくデザインに向えることの強さを実感してほしいと思います。
(柴田文江先生)

基礎デザイン学科は、一応、現在のデザイン分野を念頭において平面や立体という分け方もしていますが、基本的にはこのようなデザイン分野を横断的に捉えることが重要だと考えています。複雑化する社会では、平面や立体という分け方では捉えられないデザイン領域もあり、このような新たな領域の開拓も基礎デザイン学科の教育の特徴です。
(吉田愼悟先生)

デザインフィールドの芯を学び、各領域の導入を感じることができます。
(宮島慎吾先生)

「デザインは分けられない」という昔から伝統のように流れる精神が基礎デにはあります。平面、立体、という分類する考えそのものを根本的に見直すことができる学科でもあります。そのために様々な視点を持ったプロフェッショナルな講師陣がカリキュラムを構成しています。つまり、ズバリ言えば、学びたいことはほとんど全て学ぶことができると言っても過言ではないでしょう。
(菱川勢一先生)
Q. 色彩論、形態論、表示方法論...理論の講義ばかりなのですか?

色彩論や形態論や表示方法論は論と付いていますが、内容は講義ばかりではありません。例えば色彩論では、色彩が形や素材と関係して豊富に変容する様を実際に描いて検証して行きます。テーマに沿った前提講義は行いますが、制作と組み合わされ、その効果が体験できるようにカリキュラムが組まれています。
(吉田愼悟先生)

バウハウスの画家たち、クレーやカンディンスキーやイッテンやアルバースが求めたのは、「かたちの生成」の源泉でした。本学科もまさに、色とは何か?、形とは何か?、表現とは何か?というきわめてエッセンシャルな「デザイン生成の場」に立ち向かうための教育に主眼をおいています。それは科学的な視点であり、人文、社会、自然科学を包摂するやわらかな頭脳の鍛錬の上において可能です。理論は理屈ではなく、感性への刺激です。
(板東孝明先生)

専門科目の中で「○○論」という授業は、演習科目です。演習科目は理論的なオリエンテーションに基づいて行われる実技・実践です。授業科目毎に理論的なオリエンテーションと実技・実践の比率は異なりますが、時間的には自分で制作してみるという方に比重を置いています。
(小林昭世先生)
Q. 教職はなぜとれないのですか?

教職の単位は大変多く、そのために基礎デザイン学科がもっとも学生に伝えたい授業の時間が削られてしまいます。もとより教職に就くとしてもそのために人に教えることの意味や美術、デザインの本質を十分に学び、学科卒業後に必要単位を通信教育等で取得することができます。基礎デザイン学科卒業生はしかしながら、さまざまな教育機関で教鞭をとっています。それは表現することの本質をここで学んでいるからに他なりません。
(板東孝明先生)
Q. PCやカメラなど、入学してから購入するものはたくさんありますか?

あります。それぞれ数年、または場合によってはそれ以上の長い時間、苦楽を共にするパートナーのような道具になります。なかなか値の張る高価なものもありますが、自分の分身のような感覚で付き合う道具としてやはりじっくりと考えて選んでほしいと思います。
(菱川勢一先生)
Q. 卒業生はどんなところに就職していますか?

基礎デザイン学科の卒業生の進路は多角的です。
コミュニケーション系、プロダクト系の企業のみならず、メーカー、広告代理店、出版、流通業など多彩です。 又、デザイナーだけではなく、プランナーや教育者、執筆業など職種も多岐に分かれています。

おもな進路実績
Q. どんな設備があるんですか?

コンピュータ室、スタジオ、木工工房、シルクスクリーン工房、暗室、活版印刷工房があります。

コンピュータ室:
作品制作において必要なコンピュータ環境が整っています。 デザイン系の主要なソフトはもちろん、スキャナーやプリンターも自由に使用することができます。 また、大型のプリンターも所有しており、大きいサイズのポスター制作も可能です。 データによる課題提出も多く、コンピュータ室はいつも学生でにぎわっています。

スタジオ:
スタジオでは様々な種類のライトや三脚を使用し、撮影を行うことができます。 授業で基礎的なライティングを学び、本格的な写真撮影に取り組むことができます。 また、デジタル一眼レフカメラの貸出しも行っています。 

木工工房:
切る、穴をあける、ヤスリをかけるなど、木材を加工する機械や基本的な工具が揃っています。 木材だけでなく、アクリルやアルミ等を加工することもできます。 プロダクトの模型や展示台の制作、課題や卒業制作等で多くの学生が木工工房を利用しています。 積極的に手を動かしながら、デザインについての理解を深める場所です。

シルクスクリーン工房:
写真製版を中心とした、シルクスクリーン印刷が行える工房です。 手で描いたものやパソコンで出力したものを、そのまま製版で使用することができます。 シルクスクリーン印刷は、紙だけでなく、金属、木材、布、皮革、石材、ビニール、アクリルなど様々な素材に印刷が可能です。また、B全版といった大きなサイズを印刷することも出来ます。

暗室:
フィルムの現象からプリントまでの作業を通じて、写真の仕組みを学びます。 現像液やプリント用紙には多くの種類があり、組み合わせ次第で独自の表現をすることができます。

活版印刷工房:
手動式の卓上活版印刷機を使用して印刷を行うことが出来ます。 金属活字を使用したり、手で描いたものやパソコンで制作したものから、亜鉛凸版や樹脂凸版を作製し印刷することもできます。 凸版印刷(Letterpress)の魅力を生かし、主にカードやはがきなどの端物印刷物を制作することができます。