基礎デザイン学科

science of design

tomato
笹原早希子

赤一色の平面上のわずかに変形した反射光によって、それが均質な平面でなく、丸みを帯びていることを了解し、特徴のある稜線が記憶と繋がった瞬間に「トマトだ!」と気づく。一見、写真表現しているのかと見まごうほどリアルな本作品は、実物の果実を観察しピックアップした「らしさ」を編集した連作のイラストレーションだ。トマトのヘタも本体の赤色と相補的なバランスをもち、その深緑色も見応えのある造形性を有している。シンプルに描き出された色とかたちが、トマトの生命性へと肉迫している。

見慣れた形のウィリアムモリスの壁紙的展開
LIU WEIZHENG

リュウ・イソーは、ウイリアム・モリスの壁紙の唐草文様が、古典的な唐草模様と比較して親しみやすく柔らかいと言う。その着想をもとに、リュウはモリスの壁紙の構成原理を解析・把握した後に、現代の自分の身近なもの、例えば料理の食材やブランド・ロゴなどをモチーフとして唐草模様を制作している。確かにほんのりと優しい装飾パターンが生み出されている。これは言語で記述される批評とは異なる、モリスの壁紙に対するユニークな批評にもなっている。

Applied Apple
百目鬼 多恵

りんごの果実のかたちを他の果実に適用してみるユニークな研究である。植物の常識を乗り越えて、「ぶどう」「とうもろこし」「大根」「みかん」「スイカ」そして「もやし」などなど、様々な野菜や果物にリンゴの特徴ををアプライさせている。一見ナンセンスに見えるアプローチだが造形の緻密さによって幻想的なイメージが生み出された。これは人間の記憶に潜むイマジネーションの生成原理を探り当てていくデザインアプローチではないかと考えられる。

flock
吉田 有花

それは鳥の影が三次元に立ち上がるイメージの中の実態。
彼女は日本画を学んでおりリアルスティックな表現を得意としていたが、
本作ではそれを超える鳥の豊かな表情を模索した。大地の色である岩絵の具を使って模様を描き、フォルムとテクスチャーによって認知できる鳥の像は群「flock」となった。その美しさと新たな表現を高く評価し、基礎デザイン学科では本作を優秀賞に選出した。

市町村章はマンホールの蓋に今日も
石塚公輔

市町村章は、オリンピックエンブレムやブランドロゴなど光が当たる意匠と較べて、きわめて地味で目立たぬ存在だ。暮らしのなかに散見されるかたちが注目されることは少なく、マンホールやゴミ袋にひっそりと棲息している。その見過ごされがちな市町村章を慈しみ、その歴史性やデザインの系譜を怜悧な分析し、ダイアグラム化を試みた。その全容を俯瞰する試みには脱帽する。また、市町村章のみで描き出された日本地図には、サイズなどの恣意性はあるが、ほぼ正確な位置に配置された紋章の集積に圧倒される。